勇気


 「ありがとう。」

 レイはカイに礼を言った。
 それはセントシールズとの戦いが終わった後で、他のメンバーの誰にも聞こえないような
 小さな声で言われた言葉だった。
 カイは眉をひそめる。
 そのカイの様子を十分に予測していたレイは 「やっぱり」 というように微笑んだ。
 レイの微笑に、ますます怪訝そうな顔をしたカイを、レイは楽しそうに見つめる。
 しばらく考えても、礼の具体的な理由が思いつかなかったカイは、
 考えるのをやめ、くるっとレイに背を向けて歩き出した。
 
 「俺を・・・白虎のいなかった俺を守ろうとしてくれただろ。」

 ピクッとカイの歩みが止まった。

 「あと、白虎のいない俺なんかと一緒に戦ってくれてありがとう。」

 カイが少し振り向き、睨みつけるようにレイを見た。

 「・・・別に助けたくて助けたわけじゃない。」

 冷たい言葉。
 でもレイは知っている。
 カイはこういう言い方しかできないのだということを、
 この言葉には 「気にするな。たいしたことではない。」 という意味が隠れていることを。
 レイはうなずいた。

 カイの言葉は普通ならここで終わるはずだった。
 しかし、2,3歩進んだカイは立ち止まった。
 普段とは違うカイの様子に、レイは驚きつつもカイを見つめた。
 カイは少し俯いて,消え入りそうな声で言った。

 「・・・礼なんか言わなくてもいい。・・・俺たちは仲間だ。
  それに白虎がいなくても・・・お前は、お前だ。」


 髪の隙間から真っ赤になったカイの耳が見えて、
 レイは天にも昇る気持ちだった。
 自分のことを考えてくれたこと、 認めてくれたこと。
 あえて 「貴様」 ではなく、 「お前」 と呼んでくれたこと。


 「・・・っカイッ!」

 レイはあまりの愛しさに負けて、思わずカイを抱きしめた。
 そして、カイの鉄拳が炸裂する。

        ーーーーーーーーー帰り道、レイに機嫌が最高に良かったのは言うまでも無い。

END


ほのかな幸せ編です。
だいぶ(かなり?)前の話なんで、状況を覚えていない方も多いと思いますが・・・
そういう私も授業中に状況を思い出しながら書いたので、自信は無いです。

・・・夕日を浴びてて欲しいですね。

えっ? 誰の勇気かって?
そりゃ、もちろんカイ様の勇気です。 かなり頑張りましたでしょう。
慣れないことを言うことは、かなり勇気がいるものですからね♪

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サイトを立ち上げるために、一番初めに書いたベイ小説です。短すぎて小説というのもおこがましいですが、
初心を忘れないために、残しておきます。
(06.01.09)