美しく高価なものは人の心を狂わせるんだ

どこの世でも

いつの時代でも

美しいものに魅入られた人は

天国に昇るように堕ちていく。

 

 

貴石

 

 


俺にとっての真珠は・・・カイの瞳かなぁ

 

本を閉じて、軽く首をひねりながら、レイは呟いた。
カイに視線を投げると、その鋭い眼光がレイを貫いた。
まぶしくて、思わず目を背けたくなるようなスカーレット。

 

「レイが読書だなんて珍しいな。何を読んでいるんだ?」


 

自分の読んでいた経済雑誌を
磨きこまれた豪華なテーブルの上に伏せて
ソファーに投げ出していた肢体を起こそうとする。

 

「ここの本棚の一番薄いやつ」

 


そのままで居て、とレイが軽く肩を押さえると

逆らわず重力に身を任せ、その身体は上質のソファーに沈んだ。


 

シンジュって話。世界一大きな真珠を手に入れた漁師が
 その真珠のせいで、大変な目にあうヤツ。」

 

 

レイの簡単すぎる内容説明を聞きながら
過去の記憶をたどり、そんな話があったかもしれないと返事をする。

 

力を入れていない身体に首だけをめぐらせて
その光はなおもレイに注がれる。

 

レイはそれを上から覗き込んで、その光源を見つめた。
両目を華やかせる長いまつげが
まばたきで瞬間、見えなくなる紅の喪失感を埋めた。

 

 

みな、この瞳に惹かれるのだろう。
俺も、ユーリも、ジョニーとかミハエルとかガーランドとか
口に出したらカイに絶対怒られそうだが・・・そうきっとヴォルコフも。
みんなみんな。


カイの整った顔立ちも、
その一見冷めているように、大人びてみえる性格も、
そして身のうちの、燃えさかる炎のプライドも。
すべてこの宝石に凝縮されているのだ。

 

 


深い真紅をたたえる瞳孔は、光の加減で時折ゆらりと揺れた。
それがもっと見たくて、少し身体をずらして明かりを遮ってみたり
レイは動いた。


 

 

みんな、その瞳に惹かれて
それを手に入れたいと熱望する。
その炎で焼かれたら、浄化できる気すらする。


 


これが火渡カイの未知の光を込めた原石であるともに
最上級の宝石(カイ自身)――――

 

 

 

カイの額に軽い口付けを落とすと
くすぐったそうに顔が少し歪められた。

 

 

「なぁ、カイ。
 俺はカイが好きだから、離れ離れになるくらいなら
 カイの鼓動を止めてでも・・・俺はカイのそばにいようと思ってたんだ。」

 


だけど、だけど。

 


「だけど違う。
 それは違うかもしれないと思ったんだ。

 

 カイが俺から離れることで苦しい思いをするのなら
 それときは俺が責任をもってカイを殺してやる。
 ・・・それでいいだろ?」

 

 



だから最期の瞬間まで、その目で俺を見ていて

 

 
 

 

レイの言葉に、眉間にしわを寄せた、カイが
 
―そういうことにしてやっていてもいい―
 
そんな口の形で、息だけで呟いて

  


「責任、取れよ。」


 

そう言ったとき、
より強い生命力が双眸にキラリと宿ったことに
本人は気付いてないのだろう。

 

 

カイの答えに
レイが目を閉じて頷いた。

 


まぶたの裏に残る、赤い残像に焼かれる痛みに酔いながら。







とある日、レイとカイの位置関係ってどんなものだろう?って考えました。
あくまでも、自分の中のレイカイのイメージです。
レイのカイに求めるものと、カイのレイに求めるもの。
レイの情熱はどんなものだろう?と。
で、出てきたのが「俺が責任をもって殺してやる。」のセリフ群。

ちょっと、いやかなり間違った発想だと思うのですが。
こんな(「殺してやる」)的な愛情をもレイは秘めていてもおかしくないんじゃない?
カイ様ラブじゃん!と思ってみたので。

あとは授業で読まされた"真珠"と、図書館で何の気なしに借りてきた「鉱物図鑑」を少しトッピングして。

できあがったのが、カイ様を崇め奉ろうよ!って感じのイキオイでした;
っつか、いつの間にか信じて疑ってなかったのですが、
カイ様の目ってアカ・・・・をイメージしてるけどいいのかなぁ?


2004.1.10

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